ヒトクイマジカル／西尾維新

ヒトクイマジカル 殺戮奇術の匂宮兄妹 (講談社ノベルス)

　《戯言使い》シリーズは、思うに《作品世界》こそが全てである。ミステリだ物語だキャラクターだというのは、作者が一番描きたいことではないのでは。西尾は、こんな変な世界で独自のミステリがやりたい、こんな無茶な世界で物語を紡ぎ本当に言いたいことを言う、こんな奇妙な世界ゆえに立つキャラを出したい、なんて視点から創作していないように思う。箱庭に何を置きたいかではなく、これを置いたら箱庭はもっと面白くなるだろう、そういった思考で、西尾はシリーズを書き続けているような気がするのだ。まあ以上の部分は「こいつ電波」と気色悪がってもらって結構。ただこう考えると、清涼院の後継者って西尾維新なんだなと理解できるわけ。まあどうでもいいのだが。

　『ヒトクイマジカル』単体は、はっきり言ってそれほど面白くない話だ。長さだけはある、次作以降への軽いプロローグと思った方が良い。というわけで、軽い扱いをすべきものであろう。真面目モードではない戯言の数々は相変わらず面白いと思う。問題は、真面目モード時が随分とつまらない点だ。作者はまだ若いが、それを言い訳にするのはやっぱ読者としては奨励しない