不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

コッペリア/加納朋子

コッペリア

コッペリア

 加納朋子、デビュー11年にして初の長編。人形に魅入られた人々の、奇妙な物語。それがこの作品である。

 加納朋子の新境地ではある。特に前半の空気は、これまでの彼女にはなかった。根暗で救いがなく、しかも登場人物の狂気がはっきりと見て取れる世界。それを描写する様は意外に板に付いたもので、すんなり楽しめる。しかしだからこそ、作者のやりたいことの予想が付く。ここまで雰囲気を変え、しかも長編ということは……。

 今更のように気付いたのだが、私はもうこの作者を全面的には楽しめなくなっている。性善説に基づいた作品は、趣味じゃないということだろう。哀しい人生である。