不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

プレシャス・ライアー/菅浩江

プレシャス・ライアー (カッパ・ノベルス)

プレシャス・ライアー (カッパ・ノベルス)

 金森詳子は、従兄の次世代コンピュータ開発者、谷津原禎一郎に依頼され、研究の参考になりそうな新奇なアイデアを収集すべく、ネット上のヴァーチャルリアティの世界を探索していた。そこで彼女は〈ソルト〉と名乗る者に攻撃を受け、現実世界に戻ったら今度は〈ペッパー〉と名乗るピエロが目の前から消失する事件に出くわす。果たして彼らの目的は何なのか? それを探るべく、詳子は再びヴァーチャルリアリティの世界に潜入するが……。

 手短に、手際よくまとめられた若葉マークつきサイバーパンク。決して馬鹿にしているわけではなく、むしろ誉めている。確かに高い評価を受けている海外の名作に太刀打ちできるほど硬派でもなく未来社会の軋みを伝えてくれるわけでもないけれど、よく取材している印象は受けるし、何よりわかりやすく、読みやすい。嫌いじゃないです、こういうの。菅浩江にしては珍しく〈微温的〉じゃないし、結構お薦め。ただ、一段組みのノベルスというのは萎える。

 あと、これは作者には関係ないけれど、〈近未来SF小説〉などと題に書かれるのは興ざめ。講談社以外、ノベルスってこういうのいつもやっているが、いい加減やめてほしい。