不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

テキサスの懲りない面々/J・R・ランズデール

テキサスの懲りない面々 (角川文庫)

テキサスの懲りない面々 (角川文庫)

 ハップ&レナードシリーズ最新作。微妙にシリーズも完結したっぽい。

 猥雑な饒舌は相変わらず素晴らしい。そして今回は、人生に対する示唆や啓示にも溢れており、読み応え満点。一種の説教臭さはシリーズ中最高であり、これは『ボトムズ』『ダークライン』の、老人が子供時代を振り返るタイプの懐旧譚(の割には異常に詳細だが)との同質性を感じさせる。彼らなりの素晴らしい人生を、時に弱気になりつつも絶対に放棄せず、あくまで希求するハップとレナードの姿は、『ボトムズ』系の話で子供時代の主人公らが畏敬した、〈父性〉のそれとオーバーラップし、ランズデールは結局同じものを書いていたのだなと思い知る。

 そしてだからこそ、ちょっと飽きた。暫くこの作家とは距離を置きたいと思う。