不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

半身/S・ウォーターズ

半身 (創元推理文庫)

半身 (創元推理文庫)

 貴婦人が監獄を訪問し、そこで綺麗な霊媒の娘に出会い魅了されるお話。物語のレズビアンな意匠をどう思うかがまず第一の関門であり、それがゴシック・ロマン風の筆致で語られるのに付き合えるかが第二の関門である。

 私は第二の関門で躓いた。最近、ゴシック調の重い語りが苦手になってきた。妙に豪奢だけど大したこと言ってないよ、もっと簡単に書けるじゃねえか、と思ってしまうのである。ミステリ的にも、だから何だという感想が強い。詳しくは言わないが、さすがにこれはどうかと。

 とは言え、はまる人ははまる内容である。耽美的小説を好む方々にはたまらないだろう。また、謎が合理的に回収されるのか、超現実なままなのか、予断を許さない。作者は何かを狙っているのだが、さてそれはどっちなのか、非常に見えにくい。このメタレベルにおける緊張感は買える。

 というわけで、個人的には楽しめなかったが、創元社が京極・連城・カーと並び称してしまったのも、心情的には理解できる作品。まあ読者のツボがどこにあるかというてんにかかって来るのだろう。年末の各種ベストテンには絡んで来そうな一冊である。