不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

神のロジック 人間のマジック/西澤保彦

神のロジック・人間のマジック (本格ミステリ・マスターズ)

神のロジック・人間のマジック (本格ミステリ・マスターズ)

 USA南部と思しき荒野にぽつんと存在する全寮制の〈学校〉。生徒はたったの6名。〈学校〉がそもそも何なのか不明確ではあったが、生活はとりあえず平穏に保たれていた。だが一人の生徒の転入が、〈学校〉に潜む〈邪悪なモノ〉を目覚めさせてしまう……!

 お話面で特にいいのは、生徒が〈学校〉の謎を自分たちで読み解こうとする前半。会話と推理の妙に溢れる、まさに「明るい」方の西澤保彦の世界である。殺人が発生する後半は、謎解きの試みもあるが、ストーリー自体がカタストロフへ向け驀進し、読者は問答無用とばかり物語に引きずりこまれる。「暗い」西澤節炸裂。ここら辺の使い分け、ストーリーテリングの手腕は確かなものである。そして衝撃の結末が待っているのだ。西澤が久々に放つ、傑作だと思う。

 以上、作品・作者の責任能力範囲内で評価してみた。だが責任能力範囲外で、『神のロジック 人間のマジック』は大きな問題を抱える。このネタには先行作品があり、私にはそちらの方がミステリとして完成度が高いと思う。大きなネタの一発勝負だけというところも気になる。ていうか今作は、若干バレバレとなっております。