ブラック・ウォーター/T・J・パーカー
- 作者: T・ジェファーソンパーカー,T.Jefferson Parker,横山啓明
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2003/02
- メディア: 単行本
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『サイレント・ジョー』『凍る夏』と同様、静かな語り口で愛とは何かを描き出す作品である。特に亡きグウェンを想うアーチーの描写(彼は意識を取り戻し、姿を消す)は印象的。頭に銃弾が残っている状態で、思い出炸裂モードで語られるそれは、良くも悪くも夢見心地であり、だからこそグウェンを熱愛するアーチーの「必死さ」が見て取れ心が痛むのだ。また、主人公マーシーの〈愛〉も丹念に描かれていて良い。亡夫、息子(二歳)、父、別れた恋人、仕事のパートナーなど、様々な人への想いが交錯し、彼女の心は揺れる。
以上二名の描写が非常にうまく、作品の読み応えの大半を担う。捜査する側とされる側の繊細な人間模様は、事件の印象が薄くなるくらい、魅力たっぷりだ。ただし、結末はナニがアレ。作者は真剣なのだろうが、あまりにも滑稽な情景だと思う。
なおマーシーは、女性刑事からイメージされる、「女性の」悩みや気張りが皆無で、普通に刑事をやっている。これは非常に高得点。ぶっちゃけうざいんだよな、ああいうの。