不壊の槍は折られましたが、何か?

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深夜のベルボーイ/J・トンプスン

深夜のベルボーイ

深夜のベルボーイ

 気だるいノワールである。一人の青年の悲劇を描くこの作品は、主人公以上に読者に対して、悪夢を見ているかのような嫌な幻惑感を与える。主人公の識域の範囲さえ画然と示されないこのもやもや感は、トンプスン独特のものであり、背後に広がる闇の深さと相俟って、小説自体の価値を決定付ける。好みは別としても。

 ぶっちゃけ、この手の物語、私は好きではない。しかし妙に気になるものがあるのも事実。そしてノワールの真髄とはこのような所にあるのではないかと考えてしまうのだ。眠いのこの辺で。おやすみなさい。