虚ろな感覚/北川歩実
- 作者: 北川歩実
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2003/02
- メディア: 単行本
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これは昔の感想と乖離しており、さらなる検証要のため、今後も新刊をチェックする必要があると思う。
以下、一編毎に短くコメント。
「風の誘い」
ストーカーがいかに女性に近付くかという物語、そして謎解き。骨子はありがちだけれど、夾雑物のなさ過ぎる人工的な文章で一貫させ、雰囲気を盛り上げている。この点は他の短編でも同じ。結果的なだけか狙いかはよくわからんが、長所であることは確か。
「幻の男」
二人の女性が登場する、ツイストの効いた好短編。ほぼ会話劇。淡々とドンデン返しが連続するのはなかなか面白い。ドンデン返しそのものじゃなく、その雰囲気を味わうべき。
「蜜の味」
ぶくぶく肥りつつあるので、ダイエットネタは耳に痛い。というわけでなかなか冷静には読めなかった。ただ、オチがどういったものか、いまいちわからん。読解力落ちたなあ。
「侵入者」
侵入者は家に侵入したのか、それともネットから侵入したのかという謎がベース。《誰にでもある気の迷いor悪意》のさりげない提示と、しかしそれだけで世界が変わっちゃう怖さが凄い。この作品が、作家・北川歩実の核心に一番近いのかも、なんて思った。
「僕はモモイロインコ」
義母が死んでショック受けて、ペットのインコとしてしか喋らなくなったガキと父親の物語。最後はハートウォーミングであるが、同時に哀しい。余韻も感じられる。ただし、こういう感傷的な小説、他の短編の中ではちと浮いている。
「告白シミュレーション」
小説としては前提に多々問題あるけれど、こういう状況になったら俺、主人公と同じことやりかねない。……なんか色々思い出してきたぞ。
「完璧な塑像」
捻りの効いた作品。ミステリとしては「幻の男」と並び、この作品集中ベストの完成度を誇る。ただ、ちょっと短すぎたかもしれません。もう少し色々味わいたかった。
まあ確かに長編向けのネタじゃないから、難しいところだけれど。