不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

家に棲むもの/小林泰三

家に棲むもの (角川ホラー文庫)

家に棲むもの (角川ホラー文庫)

 『海を見る男』が別人の作品としか思えなかったので、いい意味でも悪い意味でも心配してましたが、元に戻ってます。安心半分、残念半分。個人的には、従来の作風と『海を見る男』での作風、交互に展開してほしいです。

 収められた七編の中では、表題作と「お祖父ちゃんの絵」がお気に入り。小林泰三のテイスト満載。特に前者はいい。あの有名なネタをこの作家が料理したらこうなった、という感じ。最初に述べたように全編例のオタクっぽい粘着な作風で書かれており、拒否感を覚える人がいても不思議ではない。広くは薦められないけれど、ファンとしては買うしかないと思う。