不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

モンスター・ドライブイン/J・R・ランズデール

モンスター・ドライヴイン (創元SF文庫)

モンスター・ドライヴイン (創元SF文庫)

 創元推理文庫から出た、超B級ホラー。ドライブインシアターに変な彗星が接近し、なんか変な空間に閉じ込められちゃう、という作品。表紙は最悪であるが、内容は気に入った。

 展開される安っぽい物語とハップ&レナードに通ずる軽妙な語り口が、作品を特徴付け読者を魅了する。読みやすいのもポイント高い。強いて言えば舞城王太郎に似ていないでもない雰囲気で、いくらトチ狂った作風でも、恐らく本当に気が狂っているわけではない辺り、作家としての強かさも十分に確認できる。で、こういった「偽装」があざとさを感じさせない点が、MTやDEWのような「器用貧乏作家」とランズデールの間に一本太い境界線を引く。

 まあ、バカ話を楽しみたい人には超お薦めな一冊。ただし無軌道な物語の中でも、そして最終的には放擲される概念だとはいえ、神だの正義だのをちょっと気にかけてしまう辺り、さすがにアメ公ではあるなと思いました。こういうシチュエーションで日本人の気にかけるポイントとはちょっと違うんだよな。『バトルロワイアル』『クリムゾンの迷宮』辺りと比較すると、私の感想はわかっていただけるんじゃないかと思います。