不壊の槍は折られましたが、何か?

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悪魔の寵児/横溝正史

 エログロ炸裂の金田一もの。金田一が出て来る作品で、こういう要素が前面に出されるとは思っていなかった。意外である。
 作者自身はこれを失敗作と見ないしているようだし、当時の評価も芳しくなかったようだ。妾いっぱい・蝋人形・SM・屋根裏の散歩・裸婦の死体などなど、ちょっと俗悪だし、肝心のネタの方もそこまで凄くはない。あんまり言えないのだが、「サイコ」という概念がなく、狂気の描き方が今とは違う時代に、本格として処理するとこうなっちゃうんだろうな、という感じだ。
 ただし、横溝正史自身はこういうのもやりたかったんだろうと思われるだけに、一概に否定し去るのもいかがなものか。少なくとも、『迷路荘の惨劇』よりは読むテンションが下がらなかった。ま、横溝にはまった人なら読んでも全然損じゃないです。