不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

さみしさの周波数/乙一

さみしさの周波数 (角川スニーカー文庫)

さみしさの周波数 (角川スニーカー文庫)

 お得意の短編集。なかなか良い。DQNな書き出しから始めると、ミステリ的な趣向が強いのは「フィルムの中の少女」。こういうのを読むと、乙一がミステリに拘る理由がわからなくなるのだ。別にこういう仕掛け省いてもいい気はする。ホラーっぽくて前半部はなかなか怖い。後半ただのいい話になってしまうのは、マイナスかな。

 「未来予報」って、乙一は本来こういうのがやりたんじゃないかと思わせる傑作。

 「手を握る泥棒の物語」は、そのまんまの物語。落ちも読めるし、要素的にはたいしたことないが、うまい。こういう思いつきは得ても、なかなかこうは描けません。

 「失はれた物語」、救いようがないけれど静謐でなかなかよろしい。クラシック聴き始めたらこういう発想が出て来るという事実には驚倒して良い。