人間動物園／連城三紀彦

人間動物園

どうも肌に合わない。

昔の弱点であった（と言って構わないと思う）「同時代性の欠如」は、かなり払拭されている。全てではないが。
　問題は、犯人が何をやりたかったかのか意味不明な点である。ていうか作家が思い付きを、何も考えずそのまま作品のテーマにした感がある。その意味では、最近のメフィスト賞にさえ劣るんじゃないかと思える。連城の作家性が、読者の共感を必要とする古い創作スタンスをベースとする以上、この事態は非常にいただけない。
　また、ひょっとして連城は視野の狭い作家なんじゃないかとも思う。少なくとも、同時に多くのものを俯瞰することができない。ただひたすら、一つの焦点を見詰めるだけ。これは「個」の物語を語る際には大いに威力を発揮するが、スケールが少し広がっただけで破綻をきたすのではないか？　『人間動物園』は、その証明に思えてならない。