家蝿とカナリア/ヘレン・マクロイ
- 作者: ヘレン・マクロイ,深町真理子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2002/09
- メディア: 文庫
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しかしながら、この作品の一番の見所は、演劇界に渦巻く人間関係の描写そのものにある。マクロイはやはり心理描写とか雰囲気描写とかが無茶苦茶うまい。それも、ダラダラと文章続けず、表現意欲の強度とその実現度の間に、適度な余裕は残しつつも、全頁400くらいで収めている。
だがしかし。無茶を承知で言うが、マクロイの本領は、もうちょっとガジェットの縛りがゆるい作品で発揮されるのだと思う。この点から見れば、『ひとりで歩く女』とか『読後焼却のこと』とかの方が、代表作にふさわしいと思うのだ。『家蝿とカナリア』、傑作ではあるが、必ずしも最良たらず。論理性が薄いのも、このタイプの本格では今やマイナスかと思う。