不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

ベルリン放送交響楽団来日公演(東京公演2日目)

19時〜 東京オペラシティコンサートホール

  1. ブラームス交響曲第3番ヘ長調op.90
  2. ブラームス交響曲第4番ホ短調op.98
  3. (アンコール)シューベルト:劇音楽《ロザムンデ》より間奏曲

 リヨン市立管弦楽団ドレスデン・フィルの諸君は、日本に行くと思っただけでちびった模様で、5月・6月の来日公演を中止しました。それを責めようとは思わないし、いいよいいよ気にすんなとは心底思っていますが、忘れるとは一言も言ってないのでそのつもりで。しかし、ロシア国立響、ローマ聖チェチーリア管、ウィーン・フィルそしてベルリン放送響の皆さんは来てくれました。ロシア国立響は来日拒否組がクビになったとの情報もあり色々とアレでしたが、ベルリン放送響はそんなことないでしょう。まあ実際には、中には来日拒否した団員はいてその分エキストラが結構入っていたのかも知れないけれど、音楽面でそれとわかるほど影響が出ているならともかく、そうでないなら私は気にしません。
 というわけで演奏内容ですが、まず指揮者も本気、楽団も本気で、非常に熱のこもった演奏になっていたと思います。会場も大いに盛り上がっておりました。しかし……瑞々しさや脂っけが全くないんだよなあ。テンポは快速、リズムは重くなく若干前のめり、コブシも利かさずメロディーも積極的には歌わないので、とにかくストスト進む。辛口どころか味付け皆無、各パートも恐らく確信犯で「バランスを考えず」楽譜の指示する範囲内で目一杯鳴らす。若干のミスはありましたがまあそれは実演には付き物だし、そもそも本当に若干だったんで演奏の価値に傷を付けるには程遠い。でもどうしてだろうか、私の心には全然響かなかったのです。常に怒張した高い緊張感をもってキリリと引き締まった造形を一貫させている時点で、指揮者が非凡なことは、誰がどこからどう見ても明らか。弦・木管金管・打楽器いずれもとにかく本気の音を出し、燻し銀の良い音が立ち上る。こういう演奏は大好物なはずなんですが、席の関係か自分でも知らない内に精神が疲弊していたのか感性が鈍磨していたのか、とにかく全てが私を素通りして行きました。4番のスケルツォでさえそうだったもんなあ。アンコール含めて、どの曲のどの楽章も全く同じように聞こえて、楽しくないこと夥しかった。うーん……。客観的には見事な演奏であったことは認めます。しかし、主観的には魅力をまるで感じなかったし、その度合いは「客観的には見事なんだから、あまり言わないでおくか」的な節制を吹き飛ばすには十分でした。こういうこともあるんですねえ。
 とはいえ、このコンビやヤノフスキには、また接してみたいと思います。ここまで嗜好に合わないと、それはそれで聴く価値がある。