不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

メスト指揮ウィーン・フィルに関する追記

 あそこまでdisっておいて何だが、時間が経っても、何かに駆り立てられるように奏でられた、あの硬質で豪壮な黄金の響きが忘れられない。ワーグナーだけではなく、ブルックナーの、それも「失敗」と断じた第三楽章の響きもまるで忘れられないのだ。確かにその時その場では不安タラタラであったが、「今」、その記憶に対し私が抱いている気持ちは、感動とか感心とかとは違うけれど、さりとて苛立ちや不満でも決してない。遥かにプラスの感情・感慨である。こういうのは初めての経験だ。
 何か忘れがたいものを聴いた――それだけは確かである。そして、そういう体験をさせてくれたメストとウィーン・フィルは、やはり素晴らしい音楽家であったのだろう。あのまま書き捨てていても良かったのだが、やはりそれでは「嘘」になってしまうので、改めて書き加える次第である。