トロイ・クック/最高の銀行強盗のための47ヶ条
- 作者: トロイクック,Troy Cook,高澤真弓
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2008/09
- メディア: 文庫
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とにかく“Cool!”な小説なのである。
ラブラブなタラとマックス、狂犬ワイアット、息子への愛情と保安官としての責務に板挟みにされるウィリアムズ保安官、小型レコーダーに自分の考えを録音する小悪党ピート・コレリ、気骨ある獣医のクリスピンなどなど、魅力的かつ個性的な登場人物が目白押しである。そして彼らは、コメディ・タッチで物語を進展させる。彼らは、人間の暗部をむき出しにしつつも、あくまで軽快に疾駆するのである。各人にはいかにも娯楽小説的なキャラ立ちが見られ、文学的な深い読解にはやや向かないが、ゆえに高いリーダビリティが確保されていることも見逃せない。しかも、人間の自由や誇り、それらにかかわる信念を重視する局面も多分に含まれ、決して「バカバカしいほどに軽い」だけの小説ではないのである。
というわけで、人物の変な言動に笑わせてもらいつつ、一気呵成に読める素晴らしい作品といえる。繰り返す。本書はとにかくクールである。粋だねえ、などと言いたくなるほどだ。この作家が順調に成長すれば、カール・ハイアセンを継げるのではないか。翻訳が既に予定されているという次作にも期待がかかる。