不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

読売日本交響楽団第506回名曲シリーズ

サントリーホール:19時〜

  1. ブラームス:ピアノ協奏曲第1番ニ短調op.15
  2. ブルックナー交響曲0番ニ短調WAB.100

 曲自体は前半の圧勝だが、演奏内容は後半の方が良いという一種の捩れが楽しめました。
 とはいえ、協奏曲も悪かったわけではないです。ジョン・キムラ・パーカーはその名のとおり日系人で、国籍はアメリカのようです。ジャズ・ピアニストでもあるようですが、ルガンスキーなどと比べると技術的には粗かったですが、リズムの取り方、タメの付け方などが一々様になっていて飽きさせません。マッシブに一気呵成に弾いてましたが、第2楽章では祈りの調べを堪能させてくれました。つまり何が言いたいかというと、特に不満はないということです。スクロヴァチェフスキの伴奏は意外とオーソドックスでしたが、木管の音色を浮き立たせる箇所はやはり多め。弦の各声部も聴き分けやすい。金管木管は一部でやや不調でしたかね。
 で、後半です。正直ブルックナーの第0番は習作だとしか思ったことがなくて、作曲時期がもっと早いはずの第1番と比べて、遥かにつかみどころのない音楽です。ブルックナーってだけで「クラシックをほとんど聴いたことがない人にいきなり聴かせるのはいかがなものか」という感じなのに、第0番を初回でぶつけるのは暴挙以外の何物でもない。そんな曲だと個人的には捉えています。
 本日のミスターSと読響によ演奏は……望み得る最高のものだったと言えるでしょう。とにかく弦楽器の透明感と繊細な息遣いが半端ない。日本のオケでこれは鬼レベル。メロディアスな部分もさることながら、激しい曲想、リズミカルな曲想の箇所も素晴らしい出来栄えでした。出のアインザッツこそ若干ずれる場面が多いものの、楽想が一度動き出してしまったら音がビタビタ合っていて、よくわからない《カリスマ》とやらで適当に流す箇所も皆無、内声部に至るまで実に明瞭に聴き取れ、おまけにブレンドして誤魔化そうなんて姑息なことも一切せず、楽曲は隅々までクリアの極み。テンポ・リズムもきびきびしており、指揮者の年齢(84歳11ヶ月!)を全く感じさせませんでした。名演だったと思います。
 しかし、この演奏をもってしても、私にはこの曲はよくわかりませんでした。残念至極。