不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

  1. ブルックナー交響曲第5番変ロ長調

 今日は実にグッドな演奏であった。基本的な芸風は昨日とあまり変わらないのだが、曲想により合っているし、集中力も今日の方が上であったように思う。まるで一つの楽器のように鳴るオーケストラ、リズムの表現(スケルツォとか素晴らしいですね)も実に活き活きとしていて、日本のオーケストラにはこれがなかなかできない。オーボエクラリネットの両トップが変な音を出す瞬間もあったが、気になるほどではなし(彼女らも、総合的にはいい演奏をしていたと思う)。第二楽章は特にテンポが遅く、神秘的な楽想を堪能しました。弱音部も美しく、強音部もスケール豊かに堂を満たす。去年アーノンクールが見せた《ブルックナーのイメージ》への挑戦ではなく、その特徴を強調する方向性の演奏でしたが、これはこれで素晴らしい。涙が出るほど感動したのかというと「そうではない」と答えるしかないが、この指揮者はまだ48歳、今後が非常に楽しみです。
 それにしても、指揮者が手を下ろしていないのに拍手したり歓声を上げる人々は、一体何なのだろうか。演奏者自身も(そして他の聴衆も)浸っている余韻を破壊してまで、「感動した自分」を表現したいのか。感動しているんだから我先に拍手始める権利があると思っているのか。でもテメエの感動なんざこっちは知ったこっちゃねえんだよ糞が。