ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
ベースとなるテンポをかなり揺らす演奏であったが、一つの楽想内でいじることはほとんどなく、また抑揚の付け方もなかなかうまかったので違和感はなかった。リズムが重いし、基本テンポは遅め、ここぞというところでは更に遅いテンポを取ることが多かったので、カロリー満点といった印象が強い。オーケストラは若干アインザッツが弱い場面も散見されたが、腰の据わった重く渋い響きで一貫しており、ゲルマン魂のイメージといったようなもの*1を堪能できたと思う。
一番しっくり来たのは《死と変容》。じっくり嘗めるように楽想を辿る表現で、形而上の何かを表出していたように思われた。ブラームスも面白かったが、特にフィナーレの金管コラール→弦の主題に移る際に、ゲネラル・パウゼを入れて、しかも弦の主題を弱音でやるとった仕掛けは、小細工ではあるが効果抜群であった。そしてアンコールはかなり大騒ぎ。冒頭は早く、終盤は遅くといったテンポ設定も決まっていた。
*1:微妙な表現なのは、結局ちょっと演じているのではないか、という感覚が抜けなかったからだ。なお私は、たとえそれが演技であって本音ではなかったとしても、それはそれで面白いと考えている。