天使は容赦なく殺す/グレッグ・ルッカ
- 作者: グレッグルッカ,Greg Rucka,佐々田雅子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/08
- メディア: 単行本
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テロの時代と、英・米・イスラエル・サウジアラビア間の駆け引きを背景としつつ、工作員の活躍と苦境を描く。背景のグランドデザインが非常にくっきりしており、何がどうなってこんなことになったかの筋運びは極めてスムーズ、かつ緊迫感に溢れている。白人ムスリムであるシナーンがテロに手を染める過程が平行して描かれることも、物語のいいアクセントになっている。
残念なのは、以上の要素から期待を高めたうえで訪れるアクション・シーンが悉くあっさりしていることだ。暴力を生々しく描写しないのは見識ではあるので、欠点とまでは言い切れないが、読者としては不完全燃焼に陥ると言わざるを得ない。また、タラのキャラクターもいまひとつ弾け切っていないように思う。
今のままでも十分カッコいい話ではあるが、真に魅力的なアクション・ヒロインが相応の大活躍を繰り広げるためには、もう一段上の苛烈さが求められる。このような要求に応えられない作家ではないと信じて、次作に期待したい。なお言うまでもなかろうが、装丁は神。