不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

議会に死体/ヘンリー・ウェイド

議会に死体 (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)

議会に死体 (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)

 自治都市クウェンバラの新任警察本部長レース大尉は、市議会を傍聴していた。その議会で、トラント参事官が立ち上がり、都市開発に関する不正があるのではないかと市長以下を批判し始める。その後休憩となった議会であったが、そのわずかな休憩時間中に、当のトラントが刺殺されてしまったのである……!
 地味地味なクラシック・ミステリ。ただし地味なだけのことはあり、筆致は非常にしっかりしていて格調も高い。落ち着いて読むには適した作品といえ、読者は、古式床しい英国本格の雰囲気を堪能することができよう。ミステリ的にも周到で、伏線の張り方がなかなかにイケている。そしてひたすら生真面目なのかと思いきや、最後になって明かされるある構図は、なるほど皮肉で面白い。古典好きにはお薦めしたい逸品である。