不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

殺人作家同盟/ピーター・ラヴゼイ

殺人作家同盟 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

殺人作家同盟 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

 チチェスターのアマチュア作家がつどい、自作の小説や詩、エッセイなどを発表し合うクラブ。その会長の作品が、出版社経営者のブラッカーの目にとまり、出版される運びとなる。しかし、その編集者が自宅諸共焼き殺され、会長に疑いが向けられる。クラブの新参者であるボブ・ネイラーを中心として、一部のクラブ員は会長の容疑を晴らそうと独自の調査を開始するが……。
 まず、作家志望者たちの生態と、その創作物の質に伴わないプライドが、ユーモラスかつ皮肉に描かれ、笑い(人によっては苦笑)すら誘う。登人物がしっかり描き分けられているのも好印象。倶楽部のメンバー11人はおろか、後半登場する警察の捜査チームすら、個々のキャラクターがくっきり立ち上がっていて素晴らしい。構成もよく整理されており、読みやすく、かつ読者の興味を途切れさせない。伏線回収も見所の一つで、過度の期待を寄せなければ、ミステリ的な仕掛けの部分でも十分に満足できよう。仕掛けに弱点がないわけではないが、ここまで纏められたら満足すべきだ。あと、ダイヤモンド警視が一瞬だけ顔を出すのも嬉しい。お元気そうで何よりです。
 というわけで、ラヴゼイ・ファンはもちろん、他の層にも広くすすめたい逸品である。