不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

オフィサー・ダウン/テリーザ・シュヴィーゲル

オフィサー・ダウン (ハヤカワ・ミステリ文庫)

オフィサー・ダウン (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 シカゴ市警巡査のサマンサは、流感で欠勤した同僚の代わりに、パトロールの番に付く。しかし、欠勤した同僚のパートナーは、サマンサの元彼・フレディだった。そこに、保釈中に行方を暗ませた性犯罪者を発見したとのタレコミが届く。潜伏場所に急行するフレディとサマンサだったが、暗闇の中、フレディはサマンサの銃で射殺されてしまう。だが、性犯罪者による犯行とのサマンサの主張は認められず、フレディの死は彼女の誤射によるものと定められてしまう。憤懣やる方ないないサマンサは、今の彼氏であるメイスン(ただし妻帯者)の助力も得て、独断で捜査を開始するのだが……。
 ヒロインの造形はなかなか(特にその強がりと紙一重の語り口!)だし、脇役にも癖の強いのが揃っている。というわけで、頑張っている作品であることは間違いない。展開も波乱含みで面白い。だが、総合的に見ると今一歩という感触。なぜなのか。全てにおいて平均点勝負で、バランスは良いのだが単にそれだけだからではないか。突出しているのはもちろん、陥没であっても良いから、とにかく何らかの「これは」と思わせる要素がないと、なかなか難しい。あるいはただ単に、水準を行くハードボイルドに何ら惹かれない私の嗜好/心性の問題であるのかも知れない。物語との距離感をつかみかねたということなのだろう。完成度は高いので、それなりに幅広く受け容れられるとは思う。