不壊の槍は折られましたが、何か?

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一人で歩いていった猫/大原まり子

一人で歩いていった猫 (ハヤカワ文庫 JA 149)

一人で歩いていった猫 (ハヤカワ文庫 JA 149)

 大原まり子のデビュー作が収められた短編集。《未来史》の一部を形成する。
 解説の中島梓が指摘するように、各編とも、イメージが鮮烈でなかなか面白い。乱舞するガジェット群に耽溺するような読み方が正しいはずだ。そしてそこに、種族、男女、親子等々の、言ってしまえば《普通の》愛情を丹念かつ大胆に織り込んでゆく。機械も出て来るのだが、神林長平のように徹底的な《モノ》扱いはされず、かなり擬人化して、人間の感情の理解が及ぶ範囲に引き付けることが特徴だ。ゆえに小説の筋立ては結構複雑であるにもかかわらず、受ける印象は大変シンプルになる。情感面ではわかりやすいからだ。独特の作風といえよう。
 ただ、現在手に入りやすい大原まり子の本(確かわずか2冊ですがね)と比べ、違う魅力があるのかというと疑問。まだ彼女の作品をほとんど読んでいないので、この段落は仮説にとどめます。もちろん反証見付けたらアッサリ撤回。