不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

過負荷都市/神林長平

過負荷都市 (ハヤカワ文庫JA)

過負荷都市 (ハヤカワ文庫JA)

 ……もう表紙違うんだけどなあ……。
 ある大都市の中枢体クォードラムが、世界の全てを制御しているとされる時代。登校拒否児の峯士は、殺人鬼になりたいと願っていた。しかしクォードラムはその認可を与えない。しかしある日、クォードラムは《創壊士》というロゴを空中に浮かび上がらせ、峯士に見せる。そう、新設の職業の始まりである。峯士は、ネット上の恋人・玲湖と、近所の修理工のおっさん*1も創壊士に巻き込み、時空を越えて破壊と同時に創造する*2ことに勤しむのであった。
 例によって事実上の長編である、連作短編集。十代の少年少女と、三十代のおじさんの掛け合いがまずは楽しい。そして、色々ぶち壊し回るのもとても楽しく、その裏に何か重い意味があるんだよと言わんばかりの思わせぶりな筆致も、時々情緒をたっぷりと感じさせるなどアクセントも付け、とても素晴らしい。アイデアとプロット・テーマの絡みもまずは完成度が高い。神林ファンなら非常に楽しめるのではないかと思う。

*1:と言っても30代なので、黄金期本格ミステリの基準から言えばまだまだ《青年》となる。

*2:とはいえ、破壊しかしていないように思われてならない。