善人たちの夜/天藤真
- 作者: 天藤真
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1996/10
- メディア: 文庫
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明らかな悪人は誰も登場せず、登場人物は、関係者の最大幸福を追求しようとしただけ*1。しかし、徐々に実にイヤらしく事態がねじれてくる。その過程の描き込みが本当に素晴らしい。ストーリーテリングの才が炸裂する。処女を不思議なほど作者が神聖視している点も、いかにもこの作家らしい。結果的に天藤真の最後の長編となった本作は、いかにもミステリといった形式を踏まないけれども、まさに彼にしか書き得ない小説となっている。ファンは必読。
*1:もちろん、インチキ婚礼に踊らされる大羽家の親戚一同にとっては迷惑千万ではあるのだが。