本覚坊遺文/井上靖
- 作者: 井上靖
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1984/11
- メディア: 文庫
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利休そして侘茶の全てがここにあると錯覚しかけるほどの傑作。秀吉による賜死を、利休はなぜ黙って受け入れたのか。ポイントはそこにあるが、同時にそこにもない。ここで触れられるテーマは間違いなく利休の全貌だが、あまり直接的に語られることはない。かと言って決して回りくどくもない。文章、情感、ストーリー、全てが常に簡素かつ淡白だ。だがしかし、言葉そのものには置換できない何かをも、作者は極めて明瞭に打ち出すのである。凄いとしか言いようがない。正直ちょっと呆然。
ひょっとすると、私は、日本人だから、『本覚坊遺文』を以上のように理解したのかもしれない。外国人であれば、さてどのように理解するのだろうか。ちょっと見てみたい気もする。