魔王の足跡/ノーマン・ベロウ
- 作者: ノーマン・ベロウ,武藤崇恵
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2006/01/01
- メディア: 単行本
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とても楽しく読めた作品。
オカルト趣味はかなりスッキリとした形で打ち出される。《祟りじゃー。祟りじゃー》と喚き散らす狂信者タイプのオカルト狂が出て来ない。出て来るのは、オカルトに否定的な人とも議論が噛み合う頭良さげなキャラであり、怪奇趣味が打ち出されつつも、理知的な印象さえ受け、たいへん好印象であった。なお他のキャラも、端的ではあるが要領良く描出され、物語を阻害しないと同時に、読者としてもイメージを浮かべやすい。人間の深いところを抉る人間ドラマを期待する(というか、小説とはそうでなければならないと狂信する)勢力以外には、これで十分だろう。
そして足跡の謎! 魅力的な謎だと思います。非常に素晴らしい。解法もよく整理されているし、ネタもシンプルで良い。二階堂黎人が日記で指摘していた、《現代ではちょっと難しい》ことは残念ながら間違いないけれど……。
全体的に、黄金期本格ミステリのあの雰囲気が漂っているので、ノーマン・ベロウ、色々とわかってるのは間違いない。読みやすいし、海外の古典を読んでいようが読んでいまいが、本格ファンなら試してみて良いのではないか。黄金期本格が好きな人には、普通にお薦めしたいと思う。