不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

QED 神器封殺/高田崇史

QED 神器封殺 (講談社ノベルス)

QED 神器封殺 (講談社ノベルス)

 前回の和歌山での滞在を引き伸ばした崇たち一行。そして例によって奇妙な首&右手首なし殺人事件に関係することになってしまう。
 殺人事件がどうでもいい添え物なのは、シリーズ恒例なので最早誰も気にすまい。気にする向きは読むのやめればいいだけの話。そして今回のメインは、タイトルどおり三種の神器の謎に迫る! 袋綴じで提示されるアイデアもなかなか面白い。しかし例によって、まつろわぬ人々が云々を主要主題に据える。正直飽きました。さすがにレギュラー陣も飽きてきたのか、「ええっ、何ですって!」というアクションを示さなくなっている。今回の新機軸は、今後も絡んでくると思われる御名方史紋である。崇系の変人キャラで、奈々を巡る変な三角関係を形成しそうだ。私自身はミステリにおけるシリーズキャラの恋愛はどうでもいいタイプの人間(ほぼ唯一の例外はピーター×ハリエットだが、作者の願望や妄想が仮託されている様を眺めて邪笑する、というスタンス)であるが、色々マンネリ化傾向が見て取れた本シリーズに、今後ちょっとはアクセントが出るのではないでしょうか。
 以下余談。サントリーホール開館十周年ということは、本作の舞台は1996年ですね。一昔も前を舞台にしたシリーズであることを、どれ位の読者が意識しているのだろうか。たとえば携帯がほとんど出て来ないとか。