不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

GOSICKⅡ/桜庭一樹

 ヴィクトリカが母の故郷を訪ね、母の無実を晴らそうとする物語。
 前作において、事件の構成要素は種々雑多のぶっ込みであり、それを意識させず綺麗にまとめる桜庭一樹の手捌きが光っていた。一方今回、事件は比較的簡素なものとなっている。配置も過去/現在というように区分が明快だ。代わりに作者の腕の見せ所となるのは、一弥とヴィクトリカに代表される、シリーズ登場人物の交流、そして伏線とフラグの撒き散らしである。かなりはっきりと、読者の続編期待感を煽ってくる。前作はここまであからさまではなかった。恐らく良いセールスをマークし、これなら行けると作者・出版社が判断したのではないか。第二次世界大戦と思われる暗雲を彼方に見据えつつ*1、このシリーズは何処に向かうのだろう。興味を掻き立てられた時点で、私の負けであるが。

*1:もっともそこまで行くと彼らも年齢的にラノベの範疇では活躍できんのではないかと思われる。どうするんだろうか。