不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

痙攣的/鳥飼否宇

痙攣的

痙攣的

 連載既出が4編+書き下ろし1編から成る、連作短編集。最初の3編は、順に音楽、パフォーマンス、マジック各々における芸術論・美術論を背景として、ややぺダンティックに推理劇が進行する。いずれもなかなか読ませるのだが、編が進むにつれて、展開や話の構造が歪んでくるのはさすが鳥飼といったところ。そして4編目で全てはゴミ箱に捨てられ、読者は呆気にとられてしまうのである。ラスト1編に至っては完全にギャグ。
 鳥飼否宇が濃縮された一冊であることは間違いない。一般向けとは言いかねるが、少なくともファンにはお薦めしておく。