不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

タフの方舟1 禍つ星/ジョージ・R・R・マーティン

タフの方舟1 禍つ星 ハヤカワ文庫SF

タフの方舟1 禍つ星 ハヤカワ文庫SF

 慇懃であこぎ、でも筋は通っている主人公、宇宙商人ハヴィランド・タフがまずは魅力的。この怪人物の設定とそれを描ける筆力だけで、勝負は半ば決まったようなもの。しかもストーリーも面白いとなれば、これはもういい作品と言わざるを得ないのである。
 ただし正直なところ、異常な感性に満ちた、というわけではない。根幹を成すアイデアに新味はなく*1、SFや小説に新たな地平を拓くわけでもなく、情景や情感も《楽しめるエンタメ》の領域を出ない。もちろん個人的には、これでも全く構わないんですけどね。
 とにかく面白くてスカッとする話を読みたいんだ、という人には強くお薦め。小説に《問題意識》を抱きたい人には、さて、どうしましょう……。

*1:「他に例がある」と言いたいわけではない。どう言ったらいいかな、その時代々々の代表的売れっ子作家(いや彼らは彼らで凄いとは思いますよ)なら、基本的に思い付けるはずのアイデアというか……。