不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

海底の魔術師/江戸川乱歩

 海から出て来た怪物が海で悪さをするなら、わざわざ陸地上がらなくていいじゃん。……あそうか、地図をゲットしたかったのね。誤解すまん。
 と、本当にどうでもいいことをつらつら思い浮かべざるを得ないほど、読者としてはやる気が起きない小説である。眠るお宝が単なる金塊というのも惹かれない。海賊とかもうちょっと謂れがあるなら別だが、そもそも換金価値しかないものを二十面相に盗んで欲しくないというか。鉄の人魚というのも、単なる張りぼてを着た窃盗団というだけであり、組織力は中途半端、二十面相の妙技も見られない、ていうかもうちょっと手の込んだ設定しろやとなれば、やはり面白くないのである。少年探偵団もこの話ではあまり役に立っておらず、件の団体に何のシンパシーも感じない私でさえ物足りないのだから、やはりダメダメなのだろう。シリーズ中だるみ作としてその名を留めるのだろう。