不壊の槍は折られましたが、何か?

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反対進化/エドモンド・ハミルトン

反対進化 (創元SF文庫)

反対進化 (創元SF文庫)

 奇想SFを中心としつつ、古風なスペースオペラも混入している、ハミルトンの全貌を俯瞰可能と思しい短編集。どれも楽しいが、やはり最後の二編が素晴らしい。滅亡後を描く「審判のあとで」、SF作家ならではの小説といえる「プロ」は、いずれも全く違うタイプの物語でありつつ、実に味わい深い読後感を残す。
 全般に、科学的考証は正直ないも同然であり、世界観の構築も甘めだが、その分情感が勝っている。もちろん、スタージョンのようなもの凄い視点を持っているわけではなく、食い足りない人も出て来るだろう。しかし、誰にでもわかりやすい範囲でSFに情緒を盛り込める作家として、ハミルトンの存在は貴重である。《キャプテン・フューチャー》がどうかは未読なんでよくわかりませんがね。