蚊取湖殺人事件/泡坂妻夫
- 作者: 泡坂妻夫
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2005/03/10
- メディア: 文庫
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ミステリの収録作は、いずれも泡坂らしい真相のアクロバットが見られ、作者健在を示す。なお、個人的には「泡坂妻夫のロジックや真相って御伽噺だよね」と思っているので、実現可能性は、よほどの問題がない限り特に評価基準にはしません。「このトリックは無理かどうか」の基準で《亜シリーズ》とか『煙の殺意』を量る愚を避けるのは基本でしょう。各種長編も同様。
伝統職人もの・奇術もの(非ミステリ)の各編では、泡坂は直木賞作家としての顔を見せている。実際の記述の外に余情を盛り込もうとしており、結構様になっている。
ただし、ミステリだろうが非ミステリだろうが、全品テンションが低めで、名職人が手遊びに仕上げた感は否めない。『蚊取湖殺人事件』が、泡坂妻夫ファン以外にアピールすることはないだろう。というわけで、巻末の「雪の絵画教室」の初出を見て、既に大家である作家が、初読者がかなり多いと思われる媒体に手遊び作品を発表するのはいかがなものかと思ってしまった。……角川スニーカーの読者層ですか……。「評判高いけど、この程度か」と決め付けられる可能性大。