月読/太田忠司
- 作者: 太田忠司
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/01
- メディア: 単行本
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このような変な世界設定にした上で、本格ミステリを試みるのが太田忠司の『月読』である。以上のような概略だけで、まだ事件も起きていないうちから、ミステリ上の焦点は容易に見当がつくわけで、少々惜しい。しかし全体的によくまとまっており、さすがは太田忠司、完成度は高い。恋愛・自分探し・何かからの脱却etc.が中心となる青春模様も、あくまで登場人物の自我の問題として、落ち着いた筆致でしっとりと描出されており、心地よく読める。もちろん、作者のマジ人格が露出しているわけでもない。個人的には大変好ましい。ただ、こういう作品をラノベ読みがどう読むのか、個人的には若干興味がある。まあ先方は全く興味なかろうが。
というわけで、広くお薦めできるし、したい作品。太田忠司初体験にも適する。