聖なる怪物／ドナルド・Ｅ・ウェストレイク

聖なる怪物 (文春文庫)

　薬物漬けの俳優が語る、自らの半生。冒頭から怪しさ爆裂、インタビュアーの正体丸わかりの中、何かを仕掛けてくるオーラが行間から噴出する。その様から、物語が破滅系のラストへ向けて驀進していることは容易に推察できる。もちろんこの「推察」が正解かどうかは書かないが、話の勢いに乗せられて一気に読むことができたのは報告していいだろう。鬼気迫ると言ったら恐らく言い過ぎだが、両手で高らかにかざしたくなるような作品であることは事実。ウェストレイクの語りの目覚しさに、今更ながら気付きました。
　というわけで、今年の海外新刊ベスト10クラスなのは間違いない。ミステリ的に先が読めるのは残念。