不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

魔法人形/江戸川乱歩

江戸川乱歩全集 第20巻 堀越捜査一課長殿 (光文社文庫)

江戸川乱歩全集 第20巻 堀越捜査一課長殿 (光文社文庫)

 『妖人ゴング』ほどではないが、本編においても二十面相は粗暴。老人とガキを縛っておいて放火するなんて……。『怪奇四十面相』で「小林を助けなければっ」と叫んで、火事の中に飛び込んだ昔の彼はどこへ行ったのだろうか。それが火事ではなく発炎筒だったのがそんなに悔しかったのだろうか。

 事件自体は、それなりに楽しめる。人形にされてしまうのではないか/人形が生きているのではないかという怪しい雰囲気は面白い。『宇宙怪人』同様、これが《推理小説》という形に沿って解体されてしまうのは本当に惜しい。いっそのこと幻想ミステリとか幻想小説にしてしまえば良かったのに。少年探偵団もの、本格が書きたい、読者や出版社の希望など、様々な問題はあれど、やはり乱歩が自らの資質を見極めていなかった乃至、故意に無視していたということだろう。ただただ残念である。