不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

綺譚集/津原泰水

綺譚集

綺譚集

 先般の上京時、とある先輩と合意に達したのだが、津原泰水は、文章に意味以上のものを持たせることの出来る、数少ない作家の一人である。彼の文章が合うかどうかで、全ては決まる。嵌れば最高。拒否反応が出たらもうおしまい。そんな感じである。ということはつまり、実に素晴らしい作家であるということだ。万人受けなど蛆虫に投げ与えてしまえ。そして神のみ前にはケルビムが立ち給う!
 というわけで、収録15編全てが素晴らしい短編集。どれが好みだなんて、意味がないので言いません。
 ファンは必読。単発の短編ばかりなので、入門書としても好適ではないかと。

 付言すれば、話題の美しい装丁、素晴らしい紙質、著者検印などの装飾は、津原泰水の『綺譚集』だからこそ映え、素直に称揚されるし話題にも上るのだ。ダメ作家がこれを真似しても、分不相応でカッコ悪いだけでしょう。やはり中身が、売り上げ以外の全てを左右するのである。