不壊の槍は折られましたが、何か?

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疑惑/江戸川乱歩

江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者 (光文社文庫)

江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者 (光文社文庫)

 父を殺した人間は家族にいるのではないか、と疑心暗鬼に駆られる一家の物語。正確に言うと、その一家の一人が事実上の一人称で語る。表現がやや大袈裟な点はまさに乱歩だが、そこがまた良い。
 確かに特段の目覚しさ、この作品でなければという強いアピールポイントはない。しかしこの時期らしく、プロットが練られているのは好印象で、切れ味が心地よい短編。ファンなら読んでおきましょう。