夢遊病者の死／江戸川乱歩

江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者 (光文社文庫)

　タイトルそのまんま。
　つまり、夢遊病者が「眠っている間に、とんでもないことをしでかしたのではないか」と恐怖する物語である。そしてやがて惨劇が起きてしまうのだ。主人公は、それでなくとも夢遊病にて人生を棒に振っている。まさに悲惨。
　第二の作者コメントで、乱歩がトリック原理主義者の顔をのぞかせ、世迷言を述べているのは面白い。この作品が「トリックだけ」ですと？　いくら作者自身でも無茶な発言である。だって、このトリックなくても話は成り立つぜ。滑稽な悲劇じゃなくなるけど、そうであろうがあるまいが、本質的には何も変わらないでしょう。
　天城一が乱歩をトリック偏重主義と指弾したのは、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いの牽強付会と思っていたが、一面当たっていたのかもしれない。