不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

盗難/江戸川乱歩

江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者 (光文社文庫)

江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者 (光文社文庫)

 金庫に入っている現金を盗みに行くとの予告状が、とある教団に舞い込むが……。

 二転三転かつ最後はお得意の真相不確定。後年の作品よりもモダンな感じがするのは、ケレン味が薄いからである。基本的には淡々と出来事を綴るのだが、それでもなお一人称である辺りが隠し味だろう。しかしさすがに「盗難」から〈ならでは〉の魅力を嗅ぎ取ることは難しい。乱歩の幾多の傑作・快作・好作・力作の前では、存在感も霞む。そんな感じ。