不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

ストーンエイジKIDS/藤崎慎吾

ストーンエイジKIDS―2035年の山賊 (カッパノベルス)

ストーンエイジKIDS―2035年の山賊 (カッパノベルス)

 ボーイ・ミーツ・ガールものを連続で読む。とはいえ、こちらはSFかつストリートチルドレン(略してストチル)ものだ。ベースとなる甘酸っぱい情感は同じとはいえ、発現の仕方がだいぶ異なる。

 これは恐らく、温暖化とバイオ技術・ネット化をキーとした、近未来の幻視である。ストチルサイドは、それら技術化された世界と、自然の世界を、特に分け隔てない。そのアンダーグラウンドな風情は、非常に印象的である。対立する敵方も非常に素晴らしい。何より、ホームレスを追い払う目的で特殊部隊と恐竜を投入するコストパフォーマンスの悪さ!

 なお話の構造は、話の熱に引き摺られてか、錯綜・迷走気味である。シリーズものということに甘えた気配もあるが、この混濁ぶりは作品の趣旨から逸脱していない。何も考えずに読むのが吉だが、作者は間違いなく色々と濃やかに考えている。そんな小説である。