不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

名探偵ベスト101/村上貴史(編)

名探偵ベスト101 (ハンドブック・シリーズ)

名探偵ベスト101 (ハンドブック・シリーズ)

 ガイド本。
 の割には、現在作品が手に入らないようなマイナーな探偵も扱われている。一作家一探偵が原則だが、エラリイ・クイーンとドルリイ・レーンを別格扱いすることに、じゅうぶんな説明が為されているとは思えず、姿勢として潔くないと思う。クイーンを別格扱いすることは本格ファンの中では前提だが、ど素人も対象とすべきガイド本でそれに甘えてしまうのは、個人的に大いに疑問がある。鮎川哲也とかもいないし、ガイド本としてのバランスはいかがなものか?

 しかし、分析・考察本としてはハイレベルに仕上がっている。納得してしまう文章が多いし、再読・未読問わず、思わず現物を当りたくもなる。各執筆者の「探偵」に対するスタンスが巻末で明示されているのは、大変参考になる。というわけで、ある程度以上の読書量を持つ読者には有用であろう。

 以上、ガイド本を作る難しさに完全無視を決め込んで書いてみました。なお、最近、私が探偵を軽視する方向に大きく傾斜しているのも、上記感想には微妙に影響しています。