不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

シャッター・アイランド/D・ルヘイン

シャッター・アイランド (ハヤカワ・ノヴェルズ)

シャッター・アイランド (ハヤカワ・ノヴェルズ)

 最近の早川、翻訳作品のタイトルはなぜ片仮名ばかりなのだろう。気の利いた題名を翻訳者一人で考えるよりは、原題そのままの方が誤解なくていいや、ということでしょうか。単なる守りですなあ。いや守りも重要だけど。

 『シャッター・アイランド』は、デニス・ル(レ)ヘインの作品である。
 はっきり言ってレヘインが作者ということに尽きる。ルヘインがこんなミステリ書くなんて、というレベルでの罠が仕掛けられているが、折原一が帯を書いている時点で方向性は読める。この点で過度の期待は禁物だろう。しかしそれでもなかなか興味深いのは確かで、こういう形で料理されるのは割と珍しいかも。
 小説作法自体はいつものルヘインであり、暗い雰囲気で適度な緊張感を孕みつつ、性急でも緩慢でもないテンポで語られる物語は、読み応えがある。

 というわけで結構楽しめた一作。
 にしても、本格・ハードボイルド・社会派の別を問わず、人間って自分の好きなジャンルに読んだ本を(無理矢理)引き込もうとするのですね。人間って皆同じなんだなあ。本格ヲタだけが盲目じゃないんだ。良かった良かった。