少年探偵団/江戸川乱歩
- 作者: 江戸川乱歩
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2003/12/09
- メディア: 文庫
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生涯初めて読んだミステリなので、とてもじゃないが冷静に読めない。過去の強烈な愉悦が全てに優先されてしまう。町名違うけど実は近所だったなんて段、もう痺れちゃいます。色々な意味で。書生なんて言葉これで覚えたよなあ等、変な思い出も出て来るわ出て来るわ。
しかし、それを差し引いてもなお、『少年探偵団』は傑作だと思うのである。まず何よりも、子供たちに《正義》やら《規範》を一切示さないのは素晴らしい。二十面相は確かに悪役だが憎むべき悪ではなく、明智はヒーローだけれども決して訓戒を垂れない。二人ともメンツどうこうとか言い出す始末で、正義の実現で感動を誘う姿勢は希薄どころか皆無。少年探偵団は探偵団で、使命感や友情ではなく単に探偵したいから(=遊びたいから)二十面相捕縛に奔走する。
読者の興味を、How to 盗み・脅し・人攫いで惹くのも考えてみれば凄まじい。しかもここで誘われるのは嫌悪感ではなく、紛れもないワクワク感なのだ。というわけで、「子供たちよ健やかに成長しる!」という空気よりも、悪戯と同質の《秘め事》の醸す、妖しげな瘴気が感じられるような……。
これは確信犯なのか? それとも何も考えていなかっただけか?乱歩のことだから多分後者だろうが、自分の嗜好をかくも臆面なくガキに開陳し、なおかつ世間的な評判も圧倒的に上々。いやもう本当に凄い。参りました。
乱歩様。やはり貴方は神々に列せられるべき天才です。