不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

白い部屋で月の歌を/朱川湊人

白い部屋で月の歌を (角川ホラー文庫)

白い部屋で月の歌を (角川ホラー文庫)

 『相続人』と同じタイミングで、同じ賞(ただし短編賞)を受賞した作品。表題作に加えて、「鉄柱」も収められている。

 「白い部屋で月の歌を」は、特徴的な語り口で〈意外なオチ〉へ向かう物語。この語り口がなかなか良い。純粋無垢な視線で、世界が耽美的に語られるギャップ。さらに言えば、この語り口がダメな人には絶対ダメだろう。でもだからと言って、選評であっさりネタバレするのはいかがなものか。

 個人的には、併録の「鉄柱」の方が好み。〈普通〉とは何か、〈異常〉とは何かというありふれたテーマを、それなりに読ませる佳品。文章も地に足が付いており、作者の本性はこっちにあるんじゃないかとも思う。霊など超常現象も出て来ないし、やっぱ私はこっちの方がいいなあ。