不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

ルドルフ・ブッフビンダー(ピアノ)

 ベートーヴェンのピアノ・ソナタ四曲。うち三曲が《悲愴》《月光》《熱情》(残りの一曲は第6番)。超有名曲によるプログラムというわけ。

 速めのテンポでさらさら進む流麗な演奏だったが、音が非常に綺麗で感心した。本当に、全然濁らないのである(一曲につき一、二度の頻度で現れたミスタッチを除く)。一方で、楽曲の構成など、俗に「解釈」と呼ばれる面は非常にオーソドックス。ベートーヴェンをあくまで古典派として捉えたアプローチを貫徹し、《月光》の第一楽章さえ、粘らずさらりと流していた。この点も非常に好印象。高めのテンションを維持しつつ、あくまで節度を守るベートーヴェン。私は大いに気に入った。

 なお、恥ずかしながらアンコールの一曲目が何かわからない。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第三番のスケルツォらしきこと言ってたんだけど、帰宅してCD(ポミエの)聴いてみても、確証が持てません。耳も頭も悪くなったというか、まあ元から悪いので仕方ないですけど。二曲目は、ヨハン・シュトラウスの《こうもり》ピアノ編曲ver。やたら指を動かす小品で、非常に面白く聴けた。ベートーヴェンは根暗じゃなく、特に初期と中期は、楽しいだけの曲目とも相性が良い。ヨハン・シュトラウスは基本的に嫌いだけど、要は使いどころなのね……。